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今月買った本

2009.07.03.Fri.22:27
今年はなぜか、ファンだった作家やアーチストが立て続けに亡くなり、ちょっと凹み気味。
マイケル・ジャクソンの死はMMOをプレイしている最中、チャットで聞かされて、驚きました。
思わずYouTubeで「スリラー」のプロモビデオを見て、感傷に浸ってしまいました。
まあでも、ミュージシャンはなべて広く浅くファンになっているので、作家ほどの衝撃はなかったかも。

てなわけで。
今月は好きだった作家の作品が復刻&新シリーズ開幕!というわけで、ついつい買ってしまいました。

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野田昌宏 銀河乞食軍団 合本版[1]「発動!タンポポ村救出作戦」
鷹見一幸 野田昌宏原案 銀河乞食軍団黎明編[1] 「<蒼橋>義勇軍、出撃!」
栗本薫 グインサーガ外伝[1] 「七人の魔道士」

グインサーガは言わずもがなですが、銀河乞食軍団はご存知ない方も結構いるかもしれませんね。
日本初のスペースオペラとしては、クラッシャー・ジョウが嚆矢ではありますが、スペオペといえば宇宙軍大元帥・野田昌宏氏を措いては語ることはできません。
キャプテン・フューチャー、スターウルフ他多くの海外スペオペの訳者であり、スター・ウォーズEp4のノベライズ訳者も勿論、大元帥の手になるものでした。
最初の出会いはC・L・ムーアのノースウェスト・スミスシリース「大宇宙の魔女」における、愛と恨み辛みのこもった「シャンブロウ」解説「わが<シャンブロウ>への挽歌」でありました。

-畜生め!なんだって俺ァ、他人の訳した<シャンブロウ>の解説なんか書かなきゃならねェンだ!これじゃ蛇の生殺しじゃないか!畜生!くやしい!くやしい!

高2の夏、電車の中でこの文章を読んで、なんだこの人は?と思いましたね。
解説といえば、他の人が書いた本について、それにまつわるなんだかんだを、お行儀良く書くものと思っていたし、実際、いまでもそうである。
然るに、多少芝居がかってはいるものの、こんなに赤裸々に感情を吐露する人というのは、ついぞ知りません。

その後、大元帥は山本弘・編「火星ノン・ストップ」において、めでたく念願かなって「シャンブロウ」を訳したのですが、そこはそれ、大元帥の手になる「シャンブロウ」を読みたい!と願ったファンは自分だけではなかったということでしょう^^

そんな、SF、わけてもスペオペの酸いも甘いも知り尽くした大元帥のオリジナルスペオペが、面白くないわけがありましょうか!(いや、ない・・・反語w)
新刊が出るたびにむさぼるように読んでいたのですが、12巻あたりで刊行が途絶え、重版されることもなく、復刊を待ち望んでいたあの作品が、また読める!
これは、銀河のかなたに去ってしまった大元帥の、「さよならのおみやげ」と言ってもいいでしょう。

それなのに・・・ああそれなのに。
なんでハヤカワさん、こんな変型判でだすかなあ。
合本版と聞いて、創元文庫の合本版火星シリーズを思い浮かべていたのですが、手にとって見ると・・・A4版ソフト製って、ああた。
せめて、ハードカバーとまでは言わないが、B5で出してほしかったよ!

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A4判 3段組なんて、読みにくいし、腕が疲れてしょうがありません(泣)
A4で出すなら、文庫一冊分づつ薄手の分冊にして、大元帥の好きだったパルプ・マガジンの体裁にするのが洒落ってもんじゃまいか?
鶴田健二氏の絵は嫌いじゃないが、(どちらかというと大好きだが)ここは旧文庫版の表紙絵を大判で使うべきじゃなかったか?
まあねえ、当時の加藤直之画伯の絵はちょっと荒れ気味だったけど、やっぱり、復刻するなら挿絵もいっしょに!ってのが筋でしょう。

とまあ、文句ばっかりになってしまったけど、ハヤカワさんの手にかかってすっかり、夏と言えばSF!な体質の自分としては、夏の夜長に冷酒でもかたむけつつ、ゆっくり読むにはこの体裁も悪くはないなあ、とも思うのでありましたw

さて、その銀乞(ギンコジ)が、めでたく他の作家によって新シリーズ開幕であります。
ラノベの軽い文章であの講談スペオペの世界を書けるわけがない、どんなもんか、小手調べしてやるべえ、と思い、手に取ったわけですが・・・。
巻頭100ページほどを読んだ感想は、「むむ、おぬし、やるな!」と思わせられました。
軽妙洒脱な野田節をみごとに再現しつつ、ラノベ的萌え要素を加え、なおかつハードな考証に裏付けられた描写には、うならせられます。
うん、解ってるよこの人>鷹見さん
残り260ページ余りを楽しませてもらいつつ、8月刊行予定の第二巻も、楽しみにさせてもらいます。


さて、それから。
グインサーガ「七人の魔道師」であります。
正編127巻「遠いうねり」でパロにおける事件の情報が縷々語られているわけですが、隔靴掻痒(かっかそうよう)の感に我慢ならず、つい買ってしまいました。
これ、いまだ新刊で買えるんですねえ。ちょっとびっくり。
奥付を見てみると、第32版・・・うをを、すげえ。

ぱらぱらと中を広い読みしていくと、初めて読んだときの興奮が蘇ってきます。
あいかわらず饒舌ではあるけれど、近刊ほどの軽さはなく、重たさのある文体が心地よいです。
じつはアニメ連動の新版シリーズを読んでいるのですが、隔世の感を覚えます。
うわ、あのキャラって、このころはこんな台詞言ってたのかよ!これじゃ別人28号じゃん!とか思ったりしてw

うーん、グインサーガの続きを他の作家が書くというのは、案外いけるかもしれません。
あれだけ特徴ある文体でなのですから、踏襲するのは不可能ではない。・・・けど、書いてるほうが我慢できなくなるだろうなあw
なによりも、何ページも飽かず書かれていた世界描写のイマジネーションは、真似で描けるもんじゃない。でもやっぱり、続けてほしいもんです>ハヤカワさん

7/5追記
夕方には読了しました。
以下、ネタバレですので、反転してどうぞ。
不平等条約を盾に、支配権を継続しようとする紅天は、ストライキを敢行する蒼橋(あおのはし)に艦隊を差し向ける。一方、蒼橋の採鉱職人達は、この日のあるを予想して、84年前から組織していた義勇軍を召集、これに立ち向かう。
ときの連邦宇宙軍大佐、われらがムックホッファ、機関大尉ロケ松は、両勢力の調停をするべく出動した!てのがあらましなのですが・・・。
なんといっても面白いのは、蒼橋義勇軍のイナセな職人たちの活躍ですね。
最新鋭の紅天艦隊を手玉にとる手口、そして戦争を「余禄(オマケ)」と言い切って災害に立ち向かう彼らの侠気(おとこぎ)に、ほれぼれさせられます。
そして、彼らを尻に敷く女性の、なでしこっぷりときたら!
対する紅天の軍人たちも、ステロタイプなかっちん頭じゃなくてリアリストな職業軍人として描かれていて好感が持てます。
ここでは、ムックホッファとロケ松はまだまだ傍観者でしかありません。
2巻以降の活躍に乞うご期待、といったところです。
待ち遠しいなあ。
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